【ジーズニー】
3月31日にチャイコフスキーの未完成交響曲「ジーズニ」の2006年改定版(P.クリーモフ補筆) の総譜を受け取った。
まず大まかに最初のページから最後のぺージまで眺めてみた。
かつてボガティリョフがまとめたもの(4楽章構成)とあきらかに異なるのは当初作曲家が予定して残していた全3楽章構成であるという事。
オーケストレーションは作曲家が残した以上の厚みを加えず、その他はその残したものからのバランスを重視して補筆されている。
最終楽章もこれからオリジナルのスケッチを探し当てながらボガティリョフ版を細かく分析して照会していく作業に入る。
(ピアノ協奏曲No.3はこの交響曲の1楽章から改作しています。またアンダンテと終曲もこの交響曲からの改作です。)
補筆作業といってもかなりの材料がしっかり残っているのも事実です。
結論から言えば、私の私見は「未完」の作品は永遠に「未完」の作品であるという事です。
しかし交響曲としてなぜ未完で終えたのか、、、という事は最も興味深い事です。
実際作品としては作曲家本人は別作品に転用していますし、決して破棄したものではありません。
しかし交響曲としては、彼は書き続けなかった。そして「くるみ割り人形」や第6番を書き始める、、。
その真意は作曲家にしかわかりませんが、テーマが変わったから未完で筆を置いたと考えられます。
第4番、第5番の後に書かれたこの作品も恐らくそれらの交響曲同様、運命、夢、混沌、苦悩、を経て向かい風にさえ前進しようとする作曲家を感じる。
第6番の最後にはもう前進はない。
要するに、「ジーズニ」(人生・生涯)と呼ばれるこの未完交響曲では「それでも前進する」作曲家の姿を想像できる。
国立クリン・チャイコフスキーの家博物館(チャイコフスキーの別荘で現在は国が管理している博物館)とチャイコフスキー記念財団は、
これまでごく限られた一部の研究員にしか見る事が出来なかった「楽譜上の研究」からチャイコフスキーを愛する人に音楽として聴いてもらえる今回の
プロジェクトに大変な意義を見出しています。
(もしオリジナルの手書きの総譜を展示しても音楽として創造できる人は少ないが、音楽として奏でられた時に万人のものになると思っています。)
皆さんより一足早く私はこの音楽と出会いますが、大作曲家に向かい合う孤独な作業のご褒美だと思って下さいね。
5月7日 チャイコフスキーの家博物館ホール
未完成交響曲「ジーズニ」世界初演演奏会
指揮 西本智実
& チャイコフスキー記念財団・ロシア交響楽団
5月8日 モスクワチャイコフスキーホール 記念演奏会
指揮 V.シナイスキー、 西本智実
& チャイコフスキー記念財団・ロシア交響楽団
2006年4月9日 西本智実